体験してみた!在来種「赤花そば」を400年守り継ぐ但東町。そばの郷でこだわりに触れる
在来種『赤花そば』の10割そば打ち体験
在来種『赤花そば』の10割そば打ち体験
兵庫県でそば処は?と聞かれて代表格として思い浮かぶのは「出石」だと思うのですが そこから更に更に東の山間部を目指すと現れるのが「但東町」と言うエリア。
三方が京都の県境と接し、山の緑がとにかく美しい山間の町で、在来種のそばが長い年月守り継がれているらしいと聞き、新そばの時期に伺うことにしました。
神戸市内を出発し、車窓からの景色がどんどん移り変わるのを眺めながら再実感。
兵庫県ってほんまに広い!
山あいを抜ける際に魅せてくれる原生林の色鮮やかな森の木々に感嘆。川の流れの清らかさにも心癒され
兵庫に生まれ育ってうん十年、まだまだ知らない景色・歴史があるなぁ…としみじみ。知らなきゃ本当に勿体ないですね。
順調に車を走らせていると、目的地「赤花そばの郷」の手前でものすごく気になる作業をしている方々を発見!
何をしているのか気になりすぎて川向かいにいる人へ勇気を出して呼びかけると…
なんと!毎年開催されている但東町のビッグイベント「たんとうチューリップまつり」の来春の植え付け作業中に遭遇することができました。
トラックの荷台には、かごにぎっしり詰まったチューリップの球根。
畑には長靴を履いた沢山の方の姿が…。
毎年、美しい花畑を楽しみにされている方も多いかと思いますが
この時期に植え付けが行われるんですね、来年の絵柄もコッソリ教えていただいたのですが
皆さんは是非、楽しみにお待ちくださいね。
過去のチューリップまつりのお写真も提供頂きました。
開花状況などは但東シルクロード観光協会さんのHPで確認することができます。
そして、チューリップまつり会場真横にあるのが「赤花そばの郷」今回の目的地です。
そばの郷の建物周りはすべてそば畑。このような風景が但東町のあちこちに広がっていて、20町歩(約3万坪)もあるそう。在来種を守り継ぐ為、他のそばと交配しないよう但東町内では赤花そば一品種だけが栽培されています。町をあげて在来種を守っていらっしゃる事がよくわかりますね。
そばの郷代表の本田さんに、まずはそばの実を製粉する工場から見せていただきました。
赤花そばの美味しさや特徴・風味を最大限に生かすためのこだわりが工場のいたるところにありましたが、抜粋して3つご紹介します。
まずは1つ目。
日本でココだけの超大型天日乾燥機です。
工場の一番南側。日当たり抜群のエリアにガラス張りの乾燥室がありました。
ここでじっくり数日かけてそばの実を天日乾燥させていきます。機械で短時間で乾燥するのに比べて旨味がしっかり凝縮されるのだとか。
余談ですが、この大型天日乾燥機は、日本で1台しかありません。そばの郷さんがメーカーに相談をして作って頂いたそうです。
そして、2つ目はこちら!
温度だけではなく湿度も管理する冷蔵庫。
天日干しの後、更に選別を行った玄蕎麦を袋詰めし一旦冷蔵庫で保管するのですが、一般的な冷蔵庫だと保管中にどんどんと水分が抜けていってしまいます。乾燥を防ぐため年中16パーセントの水分量が保てるよう、温度・湿度管理ができる冷蔵庫で管理されています。 (乾燥知らずなんて!ここで暮らしたいくらいです…笑)
そして、おしまいの3つ目はこちら!
特製の石臼です。
通常、石どうしがすり合わさってゴリゴリ回る中に実が入ってすり潰されていきますが、そばの郷の石臼は、石と石の間に隙間があり、回る石の間を実がすり抜ける時に蕎麦の実どうしが擦りあって粉になっていく手法なんです。
石が合わさっていない最大の利点は、実同士がぶつかって出た熱を石が吸い取ってくれるんだそう!そうすることで、そばの風味が損なわれずにしっかり保たれるそうです。
栽培から製粉まで、こんなに丁寧に作られている「赤花そば」どんな味なんだろう…と期待が膨らみます。いよいよフィールドパビリオンプログラムでもある、そば打ちに挑戦です!
新そば粉を使って、10割そば打ちに挑戦!
鉢に粉を出した瞬間からそばの実のいい香り!
手を差し入れた時の感触も本当に気持ちが良くて、うっとりします。
一般的なそば粉では粘りが足りない為、そば粉10割で作るのはかなり難しいらしいんですが、赤花そばは粘りがすごい!初心者の私でもいい感じにどんどんまとまっていきます。
生地まとめの最後の行程「菊練り」では、練れば練るほどむっちりした手触りに変わっていくのが分かります。つなぎ無しでこんなにしっかり塊になるなんて…赤花そば恐るべし!!
おしまいは、そば打ちのハイライト「切る作業」。
先生はトストストス…と小気味よいリズムで切り進めていて、ちゃんと細さがそば!
一方私はと言うと…
一目瞭然で、左が私だとわかりますね…。
せめて、うどん位に仕上がれば良いなと思っていたんですが先生からは「きしめんやね」との評価を頂きました(笑) 切る工程が一番難しかったなぁ…。
終始、そばの実の香ばしいアロマに包まれつつ、切る作業では無心になれて、リフレッシュ効果も高いように感じました。そば打ち、極めたくなりますね。
切ったそばを上手に湯がいていただき
いざ、実食!
本田さんが「よく噛んでみてください」とおっしゃるのでモグモグと嚙み進めると…
「!!」
噛めば噛むほどジワジワと溢れる旨味!
旨味を感じたいからもっともっと噛みたくなっちゃいます。
工場見学で見せていただいたコダワリで、大切に大切に旨味が詰まってきたんだろうなぁ…と言うことが分かります。
「水そば」も食べてみませんか?と試食させていただきました。
水そば用の粉はそばの実に更にひと手間が施されています。
一年で最も寒い時期に3日間、そばの実を流水に浸け、発芽寸前になった実を再び天日乾燥し、石臼で挽いて作られるんだとか。
水につかった状態で出てくるのですが、出汁も塩もつけずに頂きます。
一口目でびっくり!
何もつけてないのに更にガツンと濃厚な旨味がやってきました。ほんのりとそばの実の甘みも感じられて、赤花そばの至高の頂き方、水そばにアリです!
生産数が少ないため、水そばは一日の提供数に限りがありますのでお気を付けください。
大切に守り継がれて、最高に美味しい製法を日々研究されている「赤花そばの郷」さん。
研究しつくされた美味しいおそばは一食の価値アリです。
そばの郷を後にして向かった先は、但馬安国寺。
11月に但東町に行くなら絶対に立ち寄った方がいい!とお勧めされて向かったんですが、圧巻の美しさに声を失いました。
晩秋に真っ赤に色づくドウダンツツジが、安国寺では学術的にも珍しく横長に成長していて、まるで額縁絵のような風景が楽しめるんです。
昨年から、手前の畳を鏡面仕上げの床に変えたことで、更に映える景色に…
SNSを中心に「死ぬまでに一度は見たい景色」にも挙げられるなどして、昨年は3万人の来場者があったとか。
団体のお客様も沢山来られるそうですが、檀家の皆さんがチームワーク良く誘導等をされていて、気持ちよく観覧することが出来ます。
皆さんがおっしゃるに、毎年の見ごろは11月15日前後とのこと。
私たちはちょっと早めの時期にお邪魔したんですが、グラデーションで色づく様子もとても素敵でした。
毎年、色づき状況は安国寺のHPで確認することが出来ますよ。
また、今年は新緑の景色も公開されたそうで、こちらも大好評だったとか!?
次年度以降も公開していこうか検討中とのことですので、気になる方は秋と同じくHPでチェックしてみてくださいね。
春はチューリップ、夏は新緑、秋は新そばにドウダンツツジ、冬は雪景色…
あなたはどの季節に但東町を楽しまれますか?
取材者:清水 理恵子(兵庫県広報専門員)
とにかく感動体質で、興味が沸いた物をとことん調べ尽くす癖があります。
感動の鮮度をそのまま記事に詰め込んで、フィールドパビリオンの魅力を発信していきます。