体験してみた!

体験してみた!坊勢島漁業見学&体験ツアー

播磨

坊勢島 漁業見学&体験ツアー

取材日|2023年7月10日

 坊勢島は姫路の南西沖、播磨灘に浮かぶ家島諸島の中部に位置する。周辺の海域が海の幸に恵まれていることから、島では伝統的に漁業が盛んであり、県下では1、2位を争う漁獲高を誇る。「坊勢島漁業見学&体験ツアー」では、播磨灘の豊かさを体感することができる。

播磨灘の幸を味わう

 集合場所は、山陽電鉄白浜の宮駅から徒歩約15分にある妻鹿漁港の「姫路まえどれ市場」。坊勢漁業協同組合が直営する施設で、坊勢島周辺や播磨灘で獲れた魚介類や加工品を販売する施設である。

水揚げされたばかりの新鮮な魚介類が店頭に並ぶ。春は「華姫さわら」、夏は「白鷺鱧」、秋は「ぼうぜ鯖」、冬場は牡蠣というように、播磨灘を代表するブランド魚を購入することができる。また生簀に泳ぐ魚を選んで「まえどれ食堂」に持ち込むことで、新鮮な海鮮料理を堪能することも可能だ。

ただ今日は、漁業体験を優先しないといけない。買い物と食事はあとまわしにして、まずは船着場に向かい、漁業見学船「第八ふじなみ」に乗船する。 

漁業見学船「第八ふじなみ」

船上で漁業に触れる

「第八ふじなみ」は、遊漁船や魚を捕る漁船ではなく、漁業体験のために新造された見学船である。そのため最新式船舶レーダーやソナーを備え、安全な航行が約束されている。またトイレやエアコンも完備しているため、快適に過ごすことができる。

かなりのスピードで沖合に向かう。家島の島影が大きく見えるようなってきたあたりで、実際に漁をしている船団と合流する。さわらはなつぎ網、底びき網、定置網、カゴ網などの漁法があり、また海苔や牡蠣の養殖場もある。今回の見学では、さわらはなつぎ網漁業と底びき網漁業を見学することができた。

さわらはなつぎ網漁業は、2隻の船が1組となって、幅の広い帯状の網を用いる漁法である。2隻の船が円を描くように移動、最後に距離を縮めて魚を追い込んでゆく。網を揚げる際に船の先端を近づける様子から「はなつぎ網漁」の名があるそうだ。

さわらはなつぎ網漁

底びき網は、海底に入れた網を漁船で曳く漁法である。鱧や蟹、鯛、エビ、カレイなど多種多様な魚介類が網に入る。見学ツアーでは漁船のすぐ近くに停泊して、一連の作業を見ることができる。

底びき網漁

 船上では、網にかかった魚を選別する体験プログラムもある。今回は選り分けたヒイカを、参加者がハサミで捌いて、新鮮なままに味わうことができた。

選別体験

島の暮らしを垣間見る

漁業体験を終えて坊勢島に上陸し、魚の中間育成施設を見学した。卵から孵ったエビやヒラメの稚魚を数か月飼育、ある程度大きくなってから海へ放流するための施設である。施設内には大きな水槽がいくつも並んでおり、それぞれに餌を投げ込む経験も楽しい。漁業者が資源保護の取り組みに力を入れていることを学ぶことができる。

中間育成施設での餌やり体験

また今回は予定に入ってなかったが、稚魚を海へ放流する体験、零下25℃にもなる漁協の製氷・貯氷施設の視察、道路が狭い家島諸島でも走行できるように全国で初めて導入された「軽の救急車」も見学、路地裏や海神社周辺の散策などが、プログラムに含まれることもあるようだ。

 播磨灘での漁業を学ぶとともに、漁を主な産業とする島の日常を垣間見る構成になっている。産業観光であって学習プログラムが中心だが、船上で潮風を全身に浴び、播磨灘の美しい風光を満喫することもできるツアーである。

取材者:橋爪紳也 (大阪公立大学研究推進機構特別教授、大阪公立大学観光産業戦略研究所長)