体験してみた!伝統芸能の守り人〜 江崎福王会十二世江崎欽次朗さん
兵庫から発信する日本伝統文化の守り人たち 姫路藩主御用能楽師「十二世江崎欽次朗」から「能」を学ぶ
兵庫から発信する日本伝統文化の守り人たち 姫路藩主御用能楽師「十二世江崎欽次朗」から「能」を学ぶ
江崎家は元禄年間より続く姫路藩お抱え能役者。というとものすごく敷居が高い気がするが、十二世欽次朗さんは、気さくで腰がとっても低い。ご自宅にある能舞台にも、ニコニコしながら「遠慮しないでどうぞ!」と案内していただける。
2才半から稽古を始め、7才で初舞台を踏んだ欽次朗さん。そんな彼も一度は中学生になった頃には能から離れ、教師を志して大学に進学。でも20歳の時、やはり家を継ぐべきであると決意し、大阪能楽養成会へ。
その後、国内外で数多くの舞台を務めるなかで、2014年には国重要無形文化財保持者(総合指定)に認定。翌15年3月には、神戸市の湊川神社で襲名披露能を開催し、曾祖父の九世が名乗った「欽次朗」の字を使い、十二世として当主を継承した。
語りのうまさと人から話を聞き出すうまさは、思いを受け止める「ワキ」としての役柄のせいかもしれない。キラキラした大きな瞳で能楽の話をはじめると、人はみな、つい時間を忘れて聞き入ってしまう。
それもそのはず。大学では小学校教員を志したとのことで、大人から小さなお子さんにまで本当にわかりやすく、能楽のイロハを語ってくれるのだ。
彼が企画する体験ワークショップのプログラムをひとたび体験すると、能楽ってこんなに楽しいモノだったのかと誰もがきっと感じることだろう。
能楽は、日本特有の音階で奏でる囃子方の音色や舞台空間を目や耳で味わうと同時に、一つひとつの物語に哲学や文学、演劇、音楽などの要素がギュッと濃縮されている「まるでエスプレッソのような世界」だという。
伝統をそのまま伝えるのではなく、あらたな切り口や魅せ方で、能楽を紹介し、新しい時代にもマッチした形で見せていくこと。
能の解説マンガの制作や、能楽子ども教室の開催など、能の魅力を幅広く伝える活動に地域の人々と一緒に積極的に取り組んでいる欽次朗さん。一方で、高砂染の江戸時代の衣装を基に能衣装の復元に取り組み、完成品を使った能「高砂」を高砂神社で披露するなど伝統と革新との両立を日々、目指している。
「観たいと思ってもらえるような仕掛けをもっと考えて、日本の伝統芸能はもちろん、江崎家の先人たちの技術と努力の結晶を、きちんと次代に引き継ぎたい」
欽次朗さんなら、きっとできる。みなさんと一緒に。ぜひ、そんな伝統芸能の守り人に、会いにきてほしい!その楽しさは保証付きです!
取材者:古田 菜穂子 (公社)ひょうご観光本部ツーリズムプロデューサー