体験してみた!

体験してみた!歴史を肌で実感! 尼崎運河クルーズツアー

摂津

尼崎運河クルーズツアー

王冠

 みなさんは「尼崎」にどんなイメージを持っていますか。
兵庫県南東部、大阪湾を臨むベイエリアに面する尼崎市は日本有数の「ものづくりのまち」として発展してきた歴史を持っています。臨海部には、発電所や鉄鋼産業などの工場が集積した重化学工業地帯であったことを背景に、かつては大気汚染や水質汚濁等の公害問題が深刻化した時期もありましたが、住民や地元企業・団体等によるさまざまな取り組みの結果、2012年には「環境モデル都市」に選定されるなど、地域の持続可能な発展のため先駆的な取り組みに挑戦する都市としてさらなる進化を続けています。
1955年、沿岸部の工業地帯の効率的な貨物の輸送・揚陸、治水・高潮対策を目的に日本で最初のパナマ運河方式の閘門として建設されたのが尼崎閘門、通称「尼ロック」です。尼崎運河クルーズはこの尼ロックを思う存分「体感」できるツアーです。

尼ロックに到着

武庫川河口を出発し、対岸に万博会場を臨みつつ心地よい海風を感じながらのクルーズをしばし楽しんだらいよいよ尼ロックに到着です。2つの水門を使い水位を調整して外海から運河へと導かれる時間はここでしか味わえない唯一無二、圧巻の体験です。

尼崎運河をクルーズ

穏やかな運河は、かつて公害に苦しんだ地域とは思えないほどの快適な環境が整っています。積極的な水質浄化活動が行われた結果、運河沿岸は子どもたちの環境学習にも使われているとのこと。この運河クルーズでは過去から現在にかけての尼崎市の環境改善の取り組みを体感しながら学ぶことができるなど有意義な時間を過ごせます。

魅力的な漁場として再評価される尼崎

江戸時代、尼崎近海は約80種類もの海産物が水揚げされる豊かな漁場の一つとして知られていました。工業地帯としての発展を機に、漁場としての価値が低下した過去もありましたが、現在では汽水域に生息し水質に大きく影響を受けると言われるチヌ(クロダイ)もお刺身で美味しくいただけるなど、魅力的な漁場の一つして再評価されています。

この海域で釣りを楽しむ方々から魚の「お裾分け」をいただき、これを市内の飲食店や子ども食堂、保育園等に食材として提供する取り組み「フィッシュシェアリング」は、貴重な海洋資源を余すことなく活用する新たな「循環型社会」のモデルとして全国から注目されているシステムです。この多くのステイクホルダーを巻き込みWin-Winで行われる持続可能な取り組みは、私たちに地域のつながりの重要性とともに大きな可能性を教えてくれます。このツアーを通じて貴重な歴史を体感すると同時にミライに向かって精力的に活動する人々の情熱や温かさにぜひ触れてみてください。

取材者:石川 路子 甲南大学地域連携センター所長・経済学部教授(「大阪・関西万博」ひょうご活性化推進協議会企画委員会委員長)