笑顔にほっこり 昔懐かしい里山で和菓子と微笑仏に出会う旅~猪名川町~
里山の昔懐かしい和菓子店で日本伝統の「練り切」体験
里山の昔懐かしい和菓子店で日本伝統の「練り切」体験
円空と並び賞された木彫り仏の作家「木喰上人」が、兵庫県猪名川町に沢山作品を残している事をご存じでしょうか?ほほ笑みを称えたお顔が特徴的な「微笑仏」は全国を巡回する展覧会も開かれている程の人気なんです。
今回は里山の新緑がまぶしい猪名川町で、微笑仏(木喰さん)をモチーフにした和菓子作りに挑戦!可愛い木喰さんの木型や、手触りが気持ちいい練り切りの感触に癒されながらも奮闘する様子は動画でもご覧いただけます。
初訪問の猪名川町。阪神エリアの一番東北に位置し、北側は丹波篠山市に隣接していると言う事を聞いて「阪神エリアって広いなぁ…」と改めて実感しました。出発時にはビル街だった風景がだんだんと里山の風景に変わっていく様子はいつまでも見ていられて、移動時間の1時間があっという間でした。
道中でチラホラと見かけたのがサイクリストの皆さん。自然豊かな猪名川ライドを楽しめることは勿論、大野山ヒルクライムの大会を開くなど猪名川町も積極的に後押ししている事もあって、ここ数年とても増えているそうです。
そんなサイクリストの方も立ち寄れるように工夫されている「和菓子処うませ」さん。創業89年で現在は三代目が切り盛りされている老舗和菓子店です。朝、開店前にお邪魔すると入口の暖簾をちょうど先代が準備をされていて、笑顔で中に招き入れて下さいました。
中では三代目店主馬瀬さんが、職人さんと練り切り体験の準備をされていました。「フィールドパビリオンの認定を頂いたばかりなので、清水さんが体験者第一号なんです!」との事。なんと光栄な事でしょう。皆さんの先陣切ってしっかり頑張ります!
机上には和菓子を作る時に必要な木型や材料がズラリ…。
その中でひと際輝いて見えたのがコチラ。
眺めているだけで自然とこちらの頬も緩んでしまいそうになる、ほっこり笑顔の木型。この木型のモデルが猪名川名物の木喰さんです。この表情から微笑仏とも呼ばれていて、猪名川で沢山出会うことが出来る笑顔の仏様です。今回は職人さんに教えて頂きながら、木喰さんと大野つつじの2種類の練り切りを作ります。
※練り切りとは?
季節の風物などを形作って四季折々を感じられる和菓子。生地は白ねりあんに求肥などを加えて練り上げて作られます。
いよいよ体験。うませの職人さんから直々に手ほどきを受けながら進めていきます。
始めて手に取った練り切りの生地は、驚くほど柔らかくてモッチリ。触っているだけで癒されそうですが、ずっと握っているのは厳禁(笑)。人肌の温かさが伝わると手に生地が付いてしまい成形が難しくなるので、手際のよさが求められます。
職人さんの「作業が終わったら生地が乾かないよう布巾の上へ!」の的確な案内に従って、成形は順調に進んでいたんですが…。つつじの花びらの部分を作る段階で大苦戦!職人さんは美しい所作でスーッと花びらを仕上げて行かれるのに、私は作業がフリーズ…。まあるい練り切りを五等分…。生地に深く筋を入れていくため、失敗の許されない工程に緊張感が高まります。
息をするのも忘れるくらいの意識全集中で、まあるい練り切りに一本ずつ筋を入れていきます。五本のラインを等間隔に、しかもラインの先の中心もしっかり合わせて!と言う重ね技の難しさ…。先生とは比べ物にならない仕上がりでしたが、この「集中する」と言う時間がこんなにも楽しいなんて!
難しいけれど楽しい!久しぶりに思い出した感覚です。
木喰さんの制作も何とか成功!見よ、この晴れやかな顔・・・(笑)
木彫り仏の木の質感を出すために二色の練り切りを使い、織り込むようにまとめていく芸術的な技にも驚いたのですが、餡を木型に入れる。取り出す。周りに傘を付けてあげる。一つ一つ全て手作業で丁寧に紡がれているんです。和菓子の繊細さは職人さんの技の結晶なんだなぁと感じました。
因みに、スクロールで戻って頂き、微笑仏の木型の写真と共に写る和菓子をご覧ください…。実は、黒い容器に収まっている方が私の作品です。木の板の上に輝く職人さんと比べ物にならない仕上がりですが、本人は大満足でワークショップを終えたのでした。
すっかり木喰さんに親近感を持ってしまった私は、ホンモノに会いたくなり、車ですぐの距離にある東光寺さんを訪ねました。境内に安置されている立木子安観音像は自由に見ることができますし、建物の中にいらっしゃる木喰さんも問い合わせが必須になりますが、ご縁があれば出会うことができるかもしれません。
何とも言えない表情の仏様。いつまでも眺めていたいと思えるくらい、柔らかで木のぬくもりが伝わってきます。眼福この上ない時間でした。
こんな感じで猪名川町内では、天乳寺・毘沙門堂等で福福しいほほ笑みの木喰さんに会うことができます。里山の自然を楽しみながら猪名川の町をぶらりと散策するのもおすすめですよ。
取材者:清水 理恵子(兵庫県広報専門員)
とにかく感動体質で、興味が沸いた物をとことん調べ尽くす癖があります。
感動の鮮度をそのまま記事に詰め込んで、フィールドパビリオンの魅力を発信していきます。