コウノトリの聖地
豊岡盆地はかつて、湿田や川の浅瀬など水辺の生きものを育む環境が極めて豊かな「コウノトリの聖地」でした。コウノトリにまつわる古代の伝承も神社や城崎温泉に残っています。絶滅前の最後のコウノトリ生息地も豊岡でした。その環境は、これからも持続的に保全するため「ラムサール条約湿地」に登録されて、国際的にも重要な湿地と認められています。
人と自然が共生する環境の再生
コウノトリが生きていくには、コウノトリの好物のエサが多くいる湿地と小さな谷が多くある地形が必要です。絶滅してしまったコウノトリの野生復帰は、野生復帰できる自然環境の再生とそうした環境下での農業を同時に実現する「人と自然の共生」の取組みです。代表例の「コウノトリ育む農法」は、多様な生物が生息できる環境で安心安全な農産物を栽培して、ブランド化して経済価値を高めることで、この両立を持続可能なものとしています。
コウノトリの聖地はこうしてできた
兵庫北部の豊岡盆地は、大陸からコウノトリが飛来し定住化した日本の「コウノトリの聖地」です。約2万年前に海の入り江であったこの地は、川の流れのボトルネックとなる固い玄武岩に覆われた河口部の存在によって、土砂の堆積と洪水を繰り返す湿地帯が形成されました。この湿地が、水生生物の豊富なコウノトリの絶好の餌場となったことでコウノトリの定住化が進みました。
国指定天然記念物「玄武洞」
玄武洞は、円山川の東岸にある国の天然記念物に指定された洞窟・絶壁で、近世の観光ガイドに既に登場していた景勝地です。約160万年前の火山噴火によって形成された固い玄武岩の厚い層です。玄武洞の玄武岩は溶岩が冷却される際に体積が小さくなることでできる割れ目が顕著で切り出しやすかったので、昔の人々が石積みや護岸用などに採石して、その跡が洞窟として残りました。地磁気の向きが南北逆になる「地磁気逆転」現象も玄武洞の玄武岩から発見されました。